前2回で書いた内容を要約すると、だいたいこんなことを書いた気がする。
・会社でノーコードを活用していこうという話が出ている。
・ノーコードが一般化するとプログラマは不要になるのか?
・コンピュータはプログラムコード通りに動く。
・ノーコードは意図した通りに動くのか?
・ノーコードの販売戦略?
・ノーコードで要望通りに動くシステムが出来上がるのか?
・ノーコードはスモールスタート出来るか?
・ノーコードで作ったシステムの権利関係は?
・ノーコードのうまい活用方法?
では、実際にノーコードを扱う案件を自分が担うとしたらどうなるのか?についてアレコレ考えてみよう。
【案件のゴール】
客(エンドユーザ)が何を望んでいるかによって案件のゴールが決まる。これを見誤るとその案件は途中もしくは完成時期に火事になる。ただし経験上、これは非常に不思議なことだが、客は自分が一体何を望んでいるのか分かっていないことが(大いに?)あり得る。よって、客の要望をヒアリングする場合には、十分に注意しないといけない。ノーコード案件に限って言えば、客はノーコードという名のツールを欲しがっているのか?それとも社内のある業務をコンピュータ活用によって改善したいのか?を問うべきだろう。
まず、客は自分が本当はどうしたいのかが分かっていないことが多い。そういう客はベンダが何か良い提案(のように見えるもの)を持ってくれば、それに乗っかろうとする。しかし、自分が何をしたいのかすら分かっていない客が、ベンダの提案内容を理解し、自分の要望(のようなもの)と合致しているか判断出来るとは考えられない。そういう場合は、問題を単純化するしかない。
購入:自分(客)の要望に敵うノーコードを購入したい。
構築:ノーコードを使って自分の要望に敵うシステムを構築したい。
購入目的なら、現時点で存在するノーコードを調査し、数点ピックアップして比較検討すれば良いが、最も重要なことは「どのノーコードを買うかは客が決定する」という点だ。その基本に立つならば、ノーコードを提供するベンダを連れて、一緒に客の要望を聞くなんてことはしてはいけない。もちろん、ベンダがノーコードにものすごく精通していて、客の話を聞いただけで、最適なノーコードを選定し提案出来るのなら話は別だ。しかし、そんなベンダが元受けのアンダーでノーコードを売ろうとするだろうか?そんな提案力があるなら、自分たちで営業して客と契約するだろう。わざわざ元受け会社と利益を分ける必要など無い。購入目的の場合は「このノーコードではやろうとしていたことが出来ないではないか!」というクレームが来ないようにすることが最大のリスク管理と言える。
では、構築目的の場合はどうだろうか?要望に敵うシステムを構築する手段として、ノーコード導入が最適解であると客が言い切るのであれば、それすなわち構築目的ではなく購入目的に切り替わる。よくあるポン知恵レベルの話として「ノーコードを使って構築すれば、運用中に発生する変更の度にベンダに依頼するのではなく自分たちで対応出来る!」というのがあるのだろう。しかし、たかだか自分たちでも構築可能な単純なシステム?を高価なノーコードという手段で実現する必要があるのだろうか?
何かある度にいちいちベンダに依頼することなく、あとで自分たちで変更出来れば良いという発想は、プログラムであれ、ノーコードであれ、自分たちでその仕組みを理解出来ることが前提となる。逆に言えば、ノーコードで構築し得ることには自ずと限界があるということだ。仮に社内の人間であっても、その人が時間をかけてノーコードと格闘し、トライアンドエラーの末にようやく実現したシステムを容易に変更可能なのは、せいぜい外見(画面の表示、文字の色やサイズなど?)と内部の固定値くらいで、それ以上の変更をしようとすれば作り直しになる可能性が高い。もちろんノーコードのクセや制限に引っかかることもある。
そもそもエンドユーザが構築手段に注文を付けること自体が間違っているのではないか?上記を踏まえれば、ノーコードを活用して実現可能なのは大したシステム(と呼べるような規模)ではない。その程度のものを高価なノーコードで実現する必要があるのだろうか?そんなものなら、ノーコードなんて使わなくても非常に安価に簡単に作れるだろう。必要なら運用上の変更にある程度耐えられる作りも不可能ではない。
ノーコードをやりたいという客からの引き合いにどう対応すべきか?については、安易に相談に乗るのではなく、それ自体が一体どういうことなのかをよく考える必要がある。
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