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April 29, 2005

たまご

プログレッシヴ・ロック(Progressive Rock)のバンドが次々とデビューを果たしたのが1968年~69年でした。したがって、レコードを買い始めて間もない頃の興味は、当然そのあたりに集中していました。すでにご紹介した、ジェネシス(Genesis)やキング・クリムゾン(King Crimson)も、やはりその頃にデビューしています。そして、どんどん表舞台で活躍するようになっていきました。

ところがそうしたアーティストとは裏腹に、素晴らしい音楽性を持ちながらアンダーグラウンドから抜け出さないアーティストが非常に多く居たことも事実です。彼らはまるで、頑なに取材を拒否し続ける拘りラーメン店の如く「自分たちの音楽性が分かる人々にだけ聴いてもらえればそれで良い」と言わんばかりに、一般の聴衆をほとんど無視したようなシニカルな活動をしていました。今回ご紹介するエッグ(Egg)というバンドもそんな雰囲気をもっている、のちにカンタベリー・ロック(Canterbury Rock)として有名になるファミリー・ツリー(Family Tree)の源流のひとつです。

彼らの系統は、キーボード・トリオだったこと、ベーシストのモント・キャンベル(Mont Campbell)が正規の音楽教育を受けていたこと、扱っていたネタ(クラシックのスタンダード)によって、クラシック・ロックと呼ばれていたようですが、私にはシンフォニックな効果を取り入れたジャズ・ロックのように聴こえます。同時期に活動していた同編成のナイス(Nice)と比べても、かなり印象が違っていました。これはモント・キャンベルとリー・ジャクソン(Lee Jackson)の、ヴォーカリストとしての声質(資質?)の違いによるものが大きいようです。キャンベルのヴォーカルはときおりシャウトしないイアン・ギラン(Ian Gillan)のように聴こえます。

このバンドのキーボード奏者であるデイヴ・スチュワート(Dave Stewart)は、後にカーン(Khan)、ハットフィールド(Hatfield & The North)、ナショナル・ヘルス(National Health)、ブラフォード(Bruford)で活躍することで有名なカンタベリー・ロック(Canterbury Rock)の中心人物です。彼の持ち味である、シニカルで知的なトーンのオルガンは大好きでした。またモント・キャンベルの非常に強靭でありながら正確なベースプレイには、きっと隠れファンが多いのではないでしょうか。クライヴ・ブルックス(Clive Brooks)のドラムスもトリオ編成に相応しい、非常にパワフルなプレイ(あまりにもパワフル過ぎてレコーディングが大変だったらしい)です。

彼らはほぼ同系統の、B面にクラシックのようなタイトルの片面曲が入ったアルバムを2枚残して解散してしまいましたが、デイヴ・スチュワートがハットフィールドの1stアルバムを出した後、一時的に再結成し、3rdアルバムを制作しました(これって元々はハットフィールドのメンバにそれぞれソロアルバムを作ったら?という提案だったらしいが・・・)。このアルバムにはユリエル(Uriel)時代の盟友?スティーヴ・ヒレッジ(Steve Hillage)や、エッグの音楽に触れてリアリティを増したと言われているヘンリー・カウ(Henry Cow)のティム・ホジキンソン(Tim Hodgekinsonとリンゼイ・クーパー(Lindsey Cooper)もゲストで参加しています。もちろん、コーラス隊ノーセッツ(Amanda Parsons, Barbara Gaskin & Ann Rosenthal)も。アルバムジャケットの写真を見ると、1stや2ndの頃の暗く俯いた表情とはうって変わって、デイヴ・スチュワートの表情は非常に明るく、にこやかなものに変わっています。自分のソロアルバムをエッグの3rdアルバムとしてレコーディング出来たことが、余程楽しかったのでしょうね。

エッグの音楽には、というよりデイヴ・スチュワートのオルガンプレイには一貫して、茹で上がるたまごの様子が擬態として表現されているように聴こえます。これはデイヴ・シンクレア(David Sinclair)のグレイ&ピンクなオルガントーンと並んで、カンタベリーの代表的なオルガンサウンドと言えると思います。

貴方も是非、鍋の中を踊る茹でたまごを眺めながら、エッグの演奏を聴いてみてください。

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