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July 31, 2005

ゴング星人

ソフト・マシーン(Soft Machine)の創始者デヴィッド・アレン(Daevid Allen)がビザの関係でイギリスに再入国出来なくなり、フランスに残って結成したのがゴング(Gong)である・・・と書き始めてみたものの、ココログを「ゴング」で検索してみたら、ロックバンドのゴングについて書いているのは私だけだった。たくさん引っかかってくるが、そのほとんどはプロレスねたではないか・・・もちろん、ゴングのファン全員がブログやホームページをやっているわけではないのだから、別に落胆することではない。ただ、実生活上でも彼らのファンに出くわしたことはほとんど無いのである。こんなに有名で実力のあるロック・バンドの知名度が日本で低いのは、なぜなんだろうか。それとも自分の感覚の方がおかしいのか。

最近になって、ふと考えるのは・・・アーティストの知名度とかセールスというのはビジネスの規模に比例しているということだ。それすなわち、関わる人の多さに比例するということである。ゴングのようなヒッピー系のミュージシャンが有名になったとして、その次に何が起きるのか。きっと、次のアルバムはまだか、作曲やリハーサルは進んでいるのか、コンサートはどうするのか、プロモーションは制作したのか、テレビ出演はいつやるのか、新聞や雑誌の取材はどう対応するのか・・・そんな周囲のアクセスに毎日翻弄されることだろう。そういうことに上手く対応出来れば、ビジネス規模はどんどん大きくなっていき、どんどん有名になれるだろうし、対応出来なければ、いくら実力のあるミュージシャンであっても有名にはなれない気がするのである。そして彼らはそんな音楽ビジネスに乗っかって、有名になり、稼ごうとするようなミュージシャンではなかったという気もする。

そんなゴングは、無名ミュージシャンの発掘で成功するヴァージン・レコードに見出され、徐々に有名になっていくが、それでも彼らの音楽のポリシーは変わらなかったように思う。なにしろリーダのデヴィッド・アレンは「永遠のヒッピー」と呼ぶに相応しい人物で、有名になって、良い家に住んで、良い車に乗って、良いものを食べて・・・なんていう生活を欲しがるような人物ではなかった。それは彼らの独創的で奇想天外で、ちょっぴりエロチックな音楽によく表れていると思う。そもそも、ただ売れたいだけなら、そんな音楽をやる必要は無いのだ。つまり、自分ないしは自分たちのエゴを貫きたかったのだと思う。しかし、そんな彼らも『エンジェルズ・エッグ(Angel's Egg)』あたりのアルバムになると、ジョルジオ・ゴメルスキ(Giorgio Gomelsky)が制作に関わるようになって、どんどん洗練されていく。

最初に目に付いたのは、やはりラジオ・ノーム・インヴィジブル(Radio Gnome Invisible)三部作だ。ただ当時のレコード屋でよく見かけたのは『エンジェルズ・エッグ』と『ユー(You)』の2作で、1作目の『フライング・ティーポット(Flying Teapot)』はほとんど置かれていなかった記憶がある。発売元が違っていたからかもしれない。当時他によく見かけたのは『Live』、『Expresso II』、『追い風(Downwind)』の3枚くらいだった。どれを最初に聴くか迷ったが、結局『エンジェルズ・エッグ』を選んだ。すでに彼らのサウンドは、レコードジャケットからある程度想像出来ていたが、実際に聴いてみて想像したとおりだったのに驚いた。ティム・ブレイク(Tim Blake)の非常に分厚いシンセサイザーの音と、ギリ・スミス(Gilli Smyth)の妖艶なスペースウィスパー・・・これだけなら「う~ん、スペーシー!」と思えば良かったのだが、そこにディディエ・マレルブ(Didier Malherbe)のサックスが絡んできて「うっ、これは一筋縄ではいかないな」と慌てて思い直した。

彼らのサウンドの特徴は、デヴィッド・アレンとギリ・スミスの独創的なヴォーカル&ウィスパー、スティーヴ・ヒレッジ(Steve Hillage)とティム・ブレイクのエレクトリック・サウンド、マイク・ハウレット(Mike Howlett)とピエール・モーラン(Pierre Moerlen)の強靭なリズムセクション、さらに不思議と彼らのエレクトリックサウンドに上手く溶け込むディディエ・マレルブのサックス&フルートが絡み合う、スペーシーなジャズ・ロックといったところか。おそらく初めて聴いた人は、この愉快で奇想天外なサウンドを凄い演奏テクニックでバシッと決めていることに驚くだろう。

その素晴らしい演奏は『ユー』の「創造主(Master builder)」という曲で完成し、以後アレン&スミスが脱退してしまう。きっと『ユー』というアルバムは、アレンの音楽世界と他のメンバの強力な演奏能力の鬩ぎ合いの中で生まれたのだと思われる。それゆえにラジオ・ノーム・インヴィジブルの完結とともに、一気に煮詰まってしまったのではないかという気もする。アレン&スミス脱退後は、ヒレッジ、ブレイク、ハウレットが離脱していき、ピエール・モーランを中心としたドラムス&パーカッションが活躍する、クロスオーバーサウンドを追求するバンドに生まれ変わっている。「アレンが居なければ、ゴングではない」というファンも居るとは思うが、個人的にはピエール・モーランズ・ゴングも好きでよく聴いている。

名ドラマー、ピエール・モーランが亡くなりました。心よりご冥福をお祈りいたします。

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