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December 05, 2005

ブリティッシュ・ジャズ・ロックの結論

60年代の初頭にアレクシス・コーナー(Alexis Korner)が創めたと言われている、ジャズ、ブルース、ロックの融合、つまりブリティッシュ・ジャズ・ロックは、ジョン・メイオール(John Mayall)、グラハム・ボンド(Graham Bond)、ニュー・ジャズ・オーケストラ(New Jazz Orchestra)、クリーム(Cream)などの主要な流れを経て、71年にジョン・ハイズマン(Jon Hiseman)率いるコラシアム(Colosseum)が結論を出して終わった、と考えるのが一般的だ。それ以降はブリティッシュ・クロス・オーバーと呼ばれている。もちろんそれ以降も、純ブリティッシュ・ジャズ的な取り組みは続いてはいるが・・・

60年代の終わりから活発に活動して、まるで我が世の春を迎えたかのようだった、ハード・ロック、プログレッシヴ・ロック、ジャズ・ロックのアーティストたちが、72年~73年になって急激に失速し、世代交代したのはコラシアムの解散やソフト・マシーン、ニュークリアスのクロス・オーバー化と無関係ではないだろう。多くのミュージシャンが指標を失ったのだ。

それはあのキング・クリムゾン(King Crimson)も例外ではない。『ポセイドンのめざめ』あたりから、キース・ティペット(Keith Tippett)等のブリティッシュ・ジャズ勢に接近し、『リザード(Lizard)』と『アイランズ(Islands)』を発表後、自らもコンボでジャズ・ロックを実践したのが『アースバウンド(Earthbound)』である。つまりそこまでが彼等なりの方法論の追及であり、その後大幅なメンバーチェンジを行い、同様の路線を踏襲したが、2年後にはロバート・フリップ(Robert Fripp)が「新時代の到来」と言ってバンドを解散させた。『アースバウンド』の後で、フリップを除く3人がクリムゾンを辞めて、すがり付くようにアレクシス・コーナーの下へ走った?というのも面白い。

さて、以上のようなことはどうでも良くて(笑)・・・コラシアムである。彼等のバンドとしての起源は60年代の初めから活動していた、ウェス・ミンスター・ファイヴ(Wes Minster Five)というハイスクール・ハンドで、そこには既にジョン・ハイズマン、デイヴ・グリーンスレイド(Dave Greenslade)、トニー・リーヴス(Tony Reeves)の3人が居たようだ。その後、クリーム結成のためグラハム・ボンド・オーガニゼーション(Graham Bond Organization)からジャック・ブルース(Jack Bruce)とジンジャー・ベイカー(Ginger Baker)が抜けたため、そこへジョン・ハイズマンが加入。ディック・ヘクストール・スミスと出会う。グラハム・ボンドと別れ、ウェス・ミンスター・ファイヴの頃に一緒だったキーボードのデイヴ・グリーンスレイドとベースのトニー・リーヴスを呼び、ヴォーカルのジェイムズ・リザーランド(James Litharland)とギターのジム・ローチェ(Jim Roche)を入れて、68年にコラシアムが結成される。まるでクリーム解散の後を引き継ぐかのように。

ファーストアルバムは、彼らの活動全体から見て、ジャズっぽいブルース・ロックという感じだが、当時としては珍しくドラマーがリーダのアルバムということで、全編ジョン・ハイズマンの渾身のプレイが目立つ。ひょっとしたら、それが騒々しいということで彼らを敬遠している人が居るのかもしれない。トニー・リーヴスのベースはジャック・ブルースやヘンリー・カウ(Henry Cow)のジョン・グリーヴス(John Greaves)のような、ハイテクニックで硬派な感じである。しかし、エゴ剥き出しの演奏で崩壊したクリームの後継ということを考えると、最初からベースやドラムスが自由奔放に演奏している様は、聴いていて非常に痛快だ。またディック・ヘクストール・スミスのソプラノ&テナー・サックス同時吹きはローランド・カーク(Roland Kirk)顔負け?だが、それが単なる曲芸ではなく、彼らのサウンドの重要な要素となっているのに驚かされる。1人でビッグバンドのホーン部隊を模しているわけだ。デイヴ・グリーンスレイドのキーボードも70年代のスタープレーヤーたちと比べて全く遜色ない本格派である。ただ公募により加入させたギターのジム・ローチェは、演奏面で他のメンバとの差があったのか、それともコラシアムが目指す音楽についていけなくなったのか、レコーディング中に脱退している。そのためかジャケットにも5人しか写っていない。その後のローチェの消息は知らなかったが、どうやらセカンドアルバムの後でデイヴ・アーバス(Dave Arbus)以外のメンバが全員脱退したイースト・オブ・エデン(East Of Eden)に参加したようだ。

セカンドアルバム『ヴァレンタイン組曲(Valentyne Suite)』は彼らの代表作として有名?だ。このアルバムはまず、キーフ(Marcus Keef)の印象的なジャケットが目を引くだろう。左側に佇む神秘的な女性といい、その後ろに広がる高原の不思議な風景といい、その中に立っているキャンドル?といい、まさにキーフならではのジャケットアートである。そして次に気になるのが『ヴァレンタイン組曲』というタイトルだ。ファーストアルバムはブルースっぽい内容だったので、一転してクラシックのアルバムを思わせるようなタイトルは、このレコードにいったいどんなサウンドが詰まっているのか、聞く者を興味津々にさせるだけのインパクトがある。そしていざレコードに針を落としてみると・・・1曲目からジミ・ヘンドリクス(Jimi Hendrix)に影響を受けたようなハードロックが飛び出してきて、さらに驚かされる。非常にハイテクニックなハードロックっぽい曲だが「こんな演奏は朝飯前さ!」という感じで楽しそうに演奏しているのが分かる。LPのA面にあたる4曲は、リザーランドのヴォーカルとギターが大活躍するといった印象だが、前作と違っているのはニール・アードレー(Neil Ardley)のアレンジ・ワークが入っているところだ。そういう意味で、ファーストアルバムよりも洒落た雰囲気のサウンドになっている。そして最大の聴き所は、やはりB面すべて使ったタイトル曲「ヴァレンタイン組曲」だろう。案の定、デイヴ・グリーンスレイドのキーボードとヴァイブが大きくフィーチャーされている。かと思うと、一変してディック・ヘクストール・スミスのソプラノサックスが美しいピアノの音色に乗って、広大な荒野を表現する・・・クラシックっぽいが非常に骨太な感じがするのは、ジョン・ハイズマンが渾身のドラミングでサウンドを支えているからだ。きっと、ニール・アードレーもこの曲の構成には関与しているのであろう。名盤である。

続くサードアルバム『ドーター・オブ・タイム(Daughter Of Time)』は前後のアルバムが強烈過ぎたためか、これまでほとんど聴いていなかった。このアルバムでは、大きなメンバチェンジが行われている。まず、ヴォーカル&ギターのリザーランドが抜け、ド迫力なソウル・シンガーのクリス・ファーロー(Chris Farlow)とクレム・クレムソン(Clem Clemson)が参加している。また、ベースのリーヴスがプロデュースに専念するという理由でプレーヤからプロデューサになり、その後任としてマーク・クラーク(Mark Clarke)とルイス・センナモ(Louis Sennamo)が半分ずつベースを担当している。ちなみにリザーランドはジョン・ウェットン(John Wetton)が初めて参加したバンドとして有名な、モーグル・スラッシュ(Mogul Thrash)を結成する。このサードアルバムでは、前作よりもさらにニール・アードレーによるストリング・アレンジが目立つ曲が多くなってきた。それがクリス・ファーローのヴォーカルと合わさって、より格調高いサウンドに聴こえる。ただ、ヴォーカルが強力になった分、ディック・ヘクストール・スミスのサックスが陰を潜めた感があり、バンドの状態としては飽和状態になりつつあることも分かる。これが彼らの最後のスタジオ作となった。

最初に聴いたアルバムは『コラシアム・ライヴ』だった。買った当時は、たしかグランド・ファンク・レイルロードやユーライア・ヒープの2枚組みライヴが、同じシリーズで出ていたと思う。値段は3000円という手頃なもので、その機に乗じていろいろ手に入れた記憶がある。伊藤政則氏の熱いライナーノーツの書きっぷりには、心を揺り動かされたものだ。それと同じものかどうかは分からないが、CD化された今もそのライナーが掲載されている。そこには、アレクシス・コーナー、グラハム・ボンド、ジョン・メイオール等の一連の系譜について書かれていて、大いに勉強になった。そういう先入観を持ってコラシアムのライヴを聴くと、ブリティッシュ・ジャズ・ロックというものを作り上げてきた男たちの気概と誇りのようなものを感じる。実際に彼等のライヴを聴いてみれば、ライナーの書きっぷりに負けないくらい、熱く激しい演奏に誰もが驚嘆するだろう。まるで、ジョン・ハイズマンのドラムソロに合わせて演奏しているかのようだ。オープニングには、ジャック・ブルースのファースト・ソロアルバムから「月へのきざはし」を持ってきて、一切手抜きなし、怒涛のプレイのオンパレードを繰り広げている。2曲目はファーストアルバムにも収録していたグラハム・ボンドの「公園の散策」。ここまでで、彼等がやりたかった音楽がどんなものだったのか大体分かるだろう。3曲目はクリス・ファーローのヴォーカルと、クレム・クレムソンのギターを大きくフィーチャーした「スケリントン」という大曲。ファーローはこの曲で、全盛期のイアン・ギランも真っ青のド派手なヴォーカルを披露している。4曲目はマイケル・ギブスの「タングルウッド'63」をコンボで演奏するという興味深いものだが、彼等は見事にオリジナルに勝るとも劣らない分厚い演奏を実現している。ここでの主役はやはりディック・ヘクストール・スミスだろう。中間部ではマルチリードの威力を遺憾なく発揮したソロ演奏を聴くことが出来る。5曲目に「ストーミー・マンデー」のリラックスした演奏を挟んで、ラストの「失われた天使」に突入する。イントロからグリーンスレイドの分厚いオルガンが徐々に曲の雰囲気を盛り上げていく・・・感動的な高揚だ。ディープ・パープルでジョン・ロードのオルガンに魅せられた人なら、きっとグッと来るのではないか。まさに幕引きに相応しいラスト曲である。個人的には、ディープ・パープルの『ライヴ・イン・ジャパン』や、レッド・ツェッペリンの『永遠の詩』と同列で評価されても何ら遜色のないライヴ・アルバムだと思う。

最後に、再結成ライヴについて。これには『コラシアム・ライヴ』と全く同じ最強メンバで行われた再結成コンサートの模様が収められている。CDではカットされている曲があるがDVDにはすべての曲が入っている。カットされているのは「スケリントン」「タングルウッド'63」「月へのきざはし」「公園の散策」の4曲。これを全盛期の演奏と比較するのはあまり意味が無いが、聴いてすぐに気が付くのは、ハイズマンの荒々しかったドラミングが少々抑え気味になり、非常に正確になったということ。その他、ファーローのヴォーカル、グリーンスレイドのキーボード、ヘクストール・スミスのサックスは上手い具合に枯れている。しかし、クレムソンやクラークの演奏はまるで現役そのものといった感じで元気いっぱいだ。とくに「失われた天使」のギタープレイには驚かされるだろう。ハイズマンが50才、ヘクストール・スミスが60才という高齢での演奏とは思えない迫力が、このライヴにも詰まっている。

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Comments

Ryu@メログレスさん、はじめまして!

グリーンスレイドは、コラシアムを聴いた後だと「えぇ!」って感じで、かなり雰囲気が違ってきませんでしたか?70年代の音源はすべて買いました。まだどれが良いと言えるほど聴き込んでいません。

こちらからもトラックバックさせていただきます。

Posted by: ノブりん | February 07, 2006 at 23:48

オハツです。
Greensladeの記事を書いたので、トラバさせてください。
Colosseum、私も大好きですよ。

Posted by: Ryu@メログレス | February 07, 2006 at 04:19

うしさん、こんばんは。

私が居るところは全く降っていないんですが、うちの実家の方は結構すごい事になっているみたいです。こちらから実家方面に荷物を送ろうとしても、年内には届かないと言われてしまいました。東名道が閉鎖になっているようです。今日実家に電話したら、バス会社がドタキャンしてきたとかで、バス旅行が取りやめになってしまったそうです・・・母親が転倒しなきゃ良いがな~っと心配していたんですが、案の定やってしまって妹にすごく怒られたそうです(笑)。街中に住む年寄りにはたいへんかもしれませんね。うしさんは、もう慣れているでしょうけど。

ふと考えてみると、私が住んでいるところは坂が多いので、雪がいっぱい降ったらとんでもないことになりそうです。そこら中で路駐したまま放置してある車が滑り落ちたら悲惨ですし・・・考えただけでゾッとします。でも、丘陵の斜面に家を建てて住んでいる人がいるということは、むかしからあまり雪が降らないということなのかもしれません。まさか家を建てて住み始めてから、雪が降ったらどうしようなんて後悔するような人は居ませんからね。寒い地方にする人の生活の知恵をいただきたいものです。そういう意味で、峠の茶屋に期待!(笑)

Posted by: ノブりん | December 23, 2005 at 20:56

こんにちわ-
雪どうですか??
今 本州の方が酷いんですってね
積雪の順位 新潟が一位で・・・北海道の某地が 32位が最高??らしいです
名古屋も さぞかし・・ご自愛くだはいね
うし>タダイマ やっと年賀状印刷中~~♪

Posted by: うし♪ | December 23, 2005 at 15:57

うしさん、こんばんは。すみません、変な記事ばかりで(笑)。

でも、コラシアムというバンドは良いですよ。イギリスが生んだ偉大なるロック・バンドです。で、なぜそんなに偉大なバンドなのに有名じゃないかと言うと、そういうバンドをレコード会社がバンバン販促したら、他の平凡なバンドのレコードが一切売れなくなってしまうからなんですぅ。それだとトータルで考えたときにレコード会社がソンしますよね?

ジョン・レノンの命日か・・・彼も偉大な思想家でした。それで射殺されてしまったんです。単なるロック・ミュージシャンだったら、もっとずーっと長生き出来たのに。ジョンの思想と言うとイマジンという歌に集約されていますよね。しかし、あの歌が目指す世界は人間の住む世界じゃないと思います。分かりますか?

それでは、そちらに伺います!(笑)

Posted by: ノブりん | December 10, 2005 at 01:16

おこんにちわ。。
う゛・・・ここまで・って(;^_^A
記事のコメントは うしには無理みたいっす
昨日はジョンレノンのお命日だったそうで
日に何度も 曲が流れたり 米国の様子がでたり
ジョンレノンって 「ハリポッタ-」の映画の主役の子に なんとなく似てない???(笑)

Posted by: うし♪ | December 09, 2005 at 16:07

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Tracked on February 07, 2006 at 04:18

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